| 真実 |
| 『真実』 「・・・いいのか?」 自分でも可笑しくなってしまうほどの、声。 ・・・かつて私がこれほどまでに、他を案じて声を発したことがあっただろうか・・・とまで思わせるほどに、その声は・・・渇き、かすれていた。 彼女を・・・切望するあまりに、身体の熱がそうさせたのだろうか? そんな私に気づいているのか、いないのか。 こくり、と彼女の小さなかぶりが・・・縦に振られる。 ちょうど、肩ほどで切りそろえられた漆黒の髪が、その動きに従って、さらり・・・と、わずかばかりの涼やかな音を立てる。 その髪の香りが、軽く、私の鼻腔に触れていく。 甘く、それでいて嫌みでない、淡い香り。 頷いた姿勢のままなので、影になり、その表情を知ることは出来ないが・・・かわりに、ほんの少しだけ覗いたそのうなじが・・・奇妙に、なまめかしく見える。 今宵。 初めて、彼女を・・・私のものにする。 ここまで、彼女に一切手を触れないできたのは、ひとえに・・・あまりに彼女が清らかであるということ、そして、私らしからぬこととはいえ、 『無理強いをすれば・・・』 という恐怖心が、その根底にあったからだ。 しかし、傍らに安らかな寝息を立てる彼女に、無意識とはいえ、この腕が伸びそうになったのも・・・数度、いや、数十度などというものではなかった。 それを何度となく、押しとどめてきたのは・・・。 鉄とも、氷ともいわしめた・・・唯一私が誇れるものであろう、培った自制心。 ・・・あるいは。 私の『死んだ』心の残滓に他ならなかったのやも知れぬ。 ・・・そうだ。 私の心は・・・。 バロル打倒を掲げたあの時から、すでに死んでいたのだと思っていた。 この身に得た力と引き替えに。 ・・・親族殺しをも為せるだけの、冷酷さを得る代わりに。 ・・・全ては、あの日から。 もとより乏しかった、人らしい感情というものが・・・ まるで蒸発するように、日に日に失せていくのが・・・私自身よくわかった。 そして、それに対し、 私は・・・無関心を決め込んでいたのだ。 故に・・・。 いかにケリュネイアが、私に何を求めていたのだとしても、 いかにオイフェが、部下という立場を越えたものを欲していたとしても、 それに応えることなど、到底・・・不可能だった。 私には、それに応えるだけの『感情』がなかったのだ。 それが。 そのはずだった、私の心が。 ふと・・・ざわめいた。 彼女に初めて出逢った、あの日から・・・。 容貌の愛らしさと共に・・・、 その瞳の・・・光に惹かれた。 太陽のかけらそのもののような色の、輝き。 いい目をしている、と、私が率直に口にすると、 さらに・・・それが輝いた。 光そのもののような、その瞳が。 ・・・まばゆかった。 その全て、が。 まだ、何より小さかったが、 いずれは、誰より大きな光になる・・・。 そう、思った。 それは・・・私にとって、忘れられぬ邂逅となった。 それと同時に、胸をよぎる・・・予感めいたもの。 いずれ、彼女と再び出逢い、 意志と意志とのぶつかり合いから、相争うことになったとしても。 いずれは、共に手を取り合い、共に戦う・・・そんな日が来る、と。 そして、 戦いが終わりを告げる・・・その時には。 「何を・・・考えているのですか?」 彼女のその声で、ふと現実にかえる。 知らぬ間に、彼女が私の胸に・・・と、そのたおやかな身体を預けてきていた。 私は、微笑めいたものを浮かべ、それを両手で支える。 ・・・無論、それは片手で支えられるほどの、わずかな重みでしかない。 それでも・・・この奇跡の少女を、 全身で・・感じたい。 ・・・そんな想いが、私を支配する。 願わくば、ただ・・・傍らに在ろうことを。 その願いは、叶えられたというのに。 なおも人は、 ここまで貪欲になれるのか。 私は彼女の問いには答えず、しばらくそのままの体勢でいた。 感じるのは、ただ・・・、 かすかばかりの心地よい重みと、 それを完全になくさせてしまいそうなほどの柔らかさ。 さらりとした、少し冷たい感触の漆黒の髪と、 ほんのりとした・・・雛鳥のような、ぬくもり。 少しだけ、早くなっている鼓動と、 ゆったりとした、甘さを含んだ吐息。 「ネメア・・・遠い、目をしています・・・」 心配そうに、私をのぞき込んでくる瞳は、 夜明けを待つ・・・紺碧の空に茫洋と浮かぶ 琥珀色の化石よりもなお、鮮やかで、 私の心を、たやすく捕らえていく・・・。 「・・・」 そう口にした刹那、なおも愛しさが溢れる。 ふと・・・気がつけば、 彼女の顎を抑え、その顔を上向かせていた。 「あっ・・・」 これ以上、 無用の心配で彼女を煩わせることのないように・・・と そっと・・・それでいて深く、 その唇を重ねていく・・・。 そのまま、ゆっくりと体重をかけ、 誂えられたしとねの上に、彼女を横たえ・・・。 彼女に覆い被さる形で、私はその唇を味わった。 淡い桜色の唇を、 差し入れた舌で割り、 さらに・・・と、 無意識のうちに逃げまどう彼女の舌を追い、 何度となく、それを絡めとり、 ともすれば・・・強く、弱く、吸いあげる。 頬に、冷たいものを感じた。 ・・・涙。 「・・・。泣いて、いるのか」 やはり、早すぎたのだろうか。 私は・・・彼女を愛おしいと想うあまりに、あまりにも『こと』を急いてしまっていたのだろうか。 それが・・・彼女を傷つけたの、だろうか。 そんな不安が、矢継ぎ早に脳裏をよぎっては・・・消えていく。 「やはり・・・いや・・・か?」 なるべく・・・その声が、身体に潜む熱でかすれてしまわないよう、注意を払う。 ただそれは、私の中に潜む抗い難い欲望を押さえ込もうとするあまりの渇き・・・なのだが、怯えてしまっている彼女に、それを・・・、 『情事にいつまでも応じない彼女に対しての苛立ち』 と、とらえられてしまうのは、好ましくなかったのだ。 ・・・しかし、それは杞憂だったようだ。 「違います、私・・・嬉しくて。ちょっと怖いけど、嬉しさが先にあって・・・。それで、涙が・・・。変・・・ですよね」 ぐす、とすすりあげつつも、彼女は泣き笑いのような顔になる。 そして、ふと彼女の顔にかかっていた・・・私の髪の一端を軽く擡げると、そっと口づけて、こうも続ける・・・。 「ネメアの髪・・好きです。もちろん、全部好きですけど。・・・好きだから、余計に・・・なのかな? 涙が・・・止まらなくなっちゃって」 初めて、彼女に明確に示された 親愛の・・・証。 奥手な彼女なりの、 精一杯のもの。 「フフフ・・・。だが、口づけてくれるのなら・・・」 場所が違う、とは・・・あえて続けなかった。 言葉にするよりも、行動で表した方がよいに決まっているからだ。 再び、彼女に覆い被さる。 ・・・その言葉を信じて。 私との『こと』に恐れはあるが・・・それよりも喜びの方が多いのだという、その言葉を。 それが、私を気遣った気休めに過ぎないとしても。 ・・・そうだ。 もはや、私を押し止めるものは・・・ 何一つとして・・・ない。 「あぁ・・・」 天窓より、投げかけられる月神の、 ・・・紗のごとき、淡い光の腕よりも、なお。 彩なす声を、細く高く上げつつ・・・ 奇跡の少女は、 今まで守り抜いてきただろう 堅固で、それでいて、 はかなくも気高い『純潔の砦』を 形ばかりの抵抗も虚しく・・・ 私に・・・明け渡す。 私は・・・類希なるそれを手にしつつも、 自らの内に息づく、獣性の命じるがままに さらなる高まりを求め、 少女の砦を攻め上る・・・。 それは、終わりを知らぬ秘め事。 繰り返される・・・祭祀の幕開け。 ・・・傲慢なものだ。 望むものを得たとしても、 それを得るほどに、 深く、激しく・・・ 欲するようになるのが、常。 だが、 それが・・・人の子たる所以。 愛ゆえの身勝手。 そして、私が人であるという証。 それが、真実。 ********************************************************************** ・・・また、だめじゃん(死)。 今度こそ推敲したはずなのに、自分でも訳がわからぬ〜。 ネメア様が変だし、ベタ惚れだし。 ・・・・。 石が飛んでこないうちに・・・(こそこそ)。 ながれさまに押し付・・・いや、貢いでっと・・・(そそくさ)。 ・・・んじゃま、脱兎御免!! ジュワッチ!! 若様らしいひと(壊)灰(←やはり、わざと)。 |
| ありがとうございますぅ!!! あぁ、もう若様はもう離しません!!(馬鹿) 再び素晴らしい創作を・・・。 皆様!!ご存分に堪能してください!! |