Just a Lonely Boy


家に帰ってくるのが楽しみになってきているなんて僕自身想像つかなかったこと。
その理由が一人の女性だなんてもっと想像つかなかった。
その女性が妹だなんて・・・。
でも彼女が見ているのは別の誰かで。
その別の誰かが僕の兄だなんて。

「ただいま、セバスチャン。兄様は・・・いるみたいだね」
くすくすと笑いながら、長年リューガ家につかえている執事にコートを預ける。
奥からは兄と妹の言い争いが聞こえてくる。
言い争いといっても禍禍しいものではなく、どこか楽しげといったら変なのかもしれない。
でも、セバスチャンも笑いながら僕に頷くところを見るとやっぱりそうなんだろうな。
嫉妬に近い感情もないといえば嘘になる。
けど、僕は妹も兄も好きなのだ。
いっそ憎めれば楽なんだろうなぁ・・と物騒なこともちょっとは考えるけど。

声が聞こえてくるのはやはり居間だった。
僕が入ってきたとたんに、ぴたりと喧嘩は収まる。
「おかえりなさい、エスト兄様。」
「帰ってたのか、エスト。」
今までの喧嘩はいったいなんだったんだろう、と思うほど明るい声に、僕は笑いそうになるのを我慢する。
「ただいま、。レムオン兄さん。元気そうだね。」
滅多に顔を合わさない兄と妹に挨拶を返す。
「・・で?外まで聞こえるような喧嘩の原因はなんなんだい?」

「えぇ?外まで聞こえてたのぉ?」
恥ずかしそうにが慌てる。対照的にレムオン兄さんは僕を睨む。
「冗談だよ。まったく、は可愛いね。」
笑って頭をなでる。兄の視線が一弾ときつくなるのは分かっているのであえて顔は見ない。
「もう!エスト兄様ったら!!あ、でも、聞いて!レムオン兄様ってばね・・」
一瞬頬を膨らまして起こったかと思ったら、すぐさま今までの喧嘩のいきさつを話し出す。
たいてい僕はの味方だ。

話しを聞くと、なるほど、と納得してしまう。
これはレムオン兄さんが怒るわけだ。
「だって、今日はルルアンタとレルラ=ロントンが酒場で歌って踊るんだよ!こんなの滅多にないから見に行きたいのにぃぃ!!」
ソファに座って、セバスチャンが用意したミルクティを飲みながらぱたぱたと足を動かす。
「みっともないぞ、。」
たしなめる兄さんが可笑しくて思わず笑ってしまう。
「いいじゃない、兄さん。だって、もう立派な冒険者だし。街先々で噂聞く限りでは、変なことをするやつはこのロストールではいないはずだよ。」
そう。は立派な冒険者としてがんばっている。兄としては嬉しい限りだ。
「でしょ?エスト兄様もそう思うでしょ?そうなんだよ。・・まぁ、ちょっとは悲しいけど、たいていの人は私の顔見て逃げるんだから。拝んでいく人もいるけど・・・」
『竜殺し』の称号を持つに襲いかかるやつはよっぽど死にたいやつくらいだろう。
・・拝んでいくというのもなんとなく分かる気もするけど・・・。

僕とがいくら言っても頑固な兄は首をたてには振らない。
・・・おかしいなぁ・・いくら妹が心配といっても、酒場には他の仲間も集まるっていうんだし・・。
ん・・?他の仲間・・・そして、酒場・・。
あ、そっか。なるほど。
兄が承諾しない理由がわかり、思わず手を打つ。
「どうしたの?エスト兄様?」
「え、あぁ、ううん。なんでもないけど・・そっか、兄さん、そういうわけなんだね?」
思わず笑いながら兄に向き直る。
相変らず無表情だった顔がぴくりと動く。
「えー?何がそういうわけなのぉ?」
やっぱり意味がわからず、むくれているのは
しょうがない。ここは可愛い妹のためにも協力してあげよう。


「ごめんね?エスト兄様。」
スラムの街を歩く僕と
結局、僕がついていくことで、なんとか兄さんは頷いてくれた。・・・かなりの時間を費やしたけど。
「いいよ。それにと歩くのって初めてだしね。」
それは本音。
と一緒に歩けるなら、どんな手でも使うよ。今回は貧乏籤をひかせてしまった兄のためにも、ちゃんとは守ってみせるよ。

酒場につくと、すでに盛り上がっていてが来るとすぐさま人だかりができる。
どうやらかなりの人気者らしい。
「おや?あんた・・たしか、レムオンの・・」
後ろから声をかけてきたのは、同じスラムの酒場の人気者。そして、レムオン兄さんが首をたてに振らなかった理由。
「こんばんわ、ゼネテスさん。お久しぶりですね。あ、隣いいですか?」
返事を聞く前に隣に座る。きっとのためにとっておいた席なのだろう。
一瞬あっけにとられた顔をみればよく分かる。
「エスト兄様、紹介するね。んと、仲間のルルアンタとレルラ=ロントン。本当はもう一人いるんだけど・・・・あっちで一人飲んでる人がセラ。」
のとなりに並んで挨拶をかわしていく二人のリルビー。そして、確かに一人寂しく酒場のすみっこで飲んでいる一人の男の戦士。
「あ、ゼネテスは・・知ってるんだよね?」
「そりゃぁね。有名だからね。」
いろいろと、とは、心の中で呟く。

一通り紹介も終わり、ステージで二人のリルビーが歌い、そして踊る。
僕の隣にはゼネテス、そして反対側にはが座っている。
最後まで気が抜けない。ゼネテスがに好意を持っているのはすぐにわかった。
・・・・分からないのは当の本人くらいだろう。
僕とゼネテスは最後まで見えない火花を散らせていた。

ショーも終わり、あとはめいめいに騒ぎ始める酒場を後に、僕とは家路に急いだ。
最後までゼネテスが、もうちょっと、と引き止めを迷わせていたが、僕の一言であっさりときびすを返す。
『レムオン兄様が心配してるよ』
彼女にとって兄さんは兄という感情を通り越していることは分かっている。
そして、僕はあくまで兄であるということも。

楽しかったね、と、帰り道もはしゃぎっぱなしの彼女を僕はずっと返事も半分に見惚れていた。
こんな想いを忘れようと研究に没頭しているのに、忘れられない。
いつかこの想いが届くときがあるのだろうか。
言わなければきっと届かないこともわかっているけど・・・・。
きっとは困り果てた顔をするだろうな。
兄さんは本当に怒るだろうな。
想像して思わず笑ってしまう。
「今日は本当に楽しかったね、。」

家につくと、案の定、兄さんは起きて待っていた。
「ただいま、レムオン兄様」
「おかえり、。」
まるで僕がいないかのようなそんな雰囲気にちょっと悲しくなる。
「ただいま、兄さん。ちゃんと無事に帰ってきたよ。」
「あぁ、疲れているところに手間をかけさせたな。」
は兄さんと並んで、酒場であったことを話している。
その表情はとても楽しそうで、そして綺麗で・・・。
それを聞いている兄さんも嬉しそうで・・・。

かなわないなぁ・・・。
つくづくそう思う。
悔しい反面、でもなぜか嬉しくて。
もうちょっと見守ってみよう。
大好きな妹と兄の恋の行く末を・・・。

でも、ちょっとくらい邪魔してもバチはあたらないよね。
僕だって大切な妹を取られる兄の心境なんだから・・・・・。

と兄さんの会話を聞きながら、僕はそっと心の中で呟いた。

FIN
2000HITして下さった橘様からのリク創作。
エストがに片思いっていう話しだったのですが・・。
難しいものですねぇ。
上手く書けてるでしょうか?(汗)
こんなので良かったら貰ってやってください!!
そして、これからもよろしくお願いします♪

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