オトナとコドモにKISSの嵐を
ラムダ×アヤ


リィンバウムに暫くの間残ることになったアヤ。
仲間達は喜んでそれを迎えた。

「答えを見つけるまで、どうぞお願いします。」
ぺこりと頭を下げるアヤ。
魔王を倒した勇者とは誰がみても思えないほど、来たときと同じ微笑みを浮かべる。

そしてそれを穏やかに見つめている剣士が一人。


フラットのアジトで、ベッドに横たわってアヤは悩んでいた。
このままここに甘えていいのだろうかと。
仕事も持っていないアヤは無一文。
モンスターと戦い収入を得ることも出来るのだが、今となっては、そんな収入を得るわけにもいかない。というより、なぜか皆が止める。
「どうしましょう・・・リプレさんは何も言わないけど、生活が苦しいのは今まで通りですよね。」
召喚術で生業するわけにもいかず、アヤは再び頭を抱えた。

「アルバイトかぁ〜うむ、そうだなぁ。」
結局、アヤは簡単なアルバイトという道を選んだ。とはいうものの、戦闘ばかりの毎日を送ってきたアヤにとってこの世界はまだ未知なのだ。
下手に変な店にいったら大変ということで、フラットの中で生活感頼れる兄貴(笑)であるエドスに相談を持ちかけた。
「このままここに頼りっぱなしというのは、私が納得いかないんです。みんな優しいから甘えてしまいそうになるんですけど。」
てへ、と笑うアヤに、エドスは優しく微笑んで、ぽんと手を叩いた。
「そういや、あいつが料理を教えてほしいとか言ってたな・・・。」
エドスはそうだそうだと、一人納得して、立ち上がった。
「アヤ、ちょっとばかり付き合ってくれ。なにそんな遠くはない。それにお前さんの知った顔がいるところだ。支度が出来たら、広間まで来てくれ。」
アヤはとりあえず頷いて、自分の部屋へと向かった。

向かった先は繁華街。
さすがにアヤは不安になる。
繁華街といえば、女の子一人で来るところではないと、皆に散々言われた場所。まさかここで働くのだろうかと、さすがのアヤも後込みする。
「おいおい、俺がそんな危ない仕事をお前さんに紹介するか。ほれ、見えてきた。あそこだ。」
アヤの不安そうな顔を見透かしたのか、エドスは笑って指を差す。そこは・・・。
「あそこって、ベルゴさん達の?」
「あぁ。確か前に行ったときに、アヤの世界の料理の話に興味を持っていてな。まぁ、行ってみよう。」
不安な顔からホッと安心した顔に戻ったアヤは、エドスのあとをついていった。

酒場は前より随分雰囲気が明るくなっていたようだった。
まだ外が明るいこともあって、酒場はまだ準備中のようだ。
カラン、という鐘の音が鳴り響く。
「すまんがまだ・・・ん、なんだ、お前達か。」
中にいたのは、ベルゴではなく・・・。

カウンターに長身の男が座っていた。傍らにはやはり大きな剣。
「こんにちは、ラムダさん。」
エドスの後ろからひょこんとでると、アヤはぺこりと一礼する。ほんのりと頬が赤いのは緊張のせいではないことをアヤは知っていた。
「ベルゴは来てないのか?」
エドスはラムダに話しかけた。アヤはどうしていいのか分からず、とりあえず少し離れて店の周りを見回した。
「あいつなら買い出しだ。俺はまぁ・・留守番だな。ところで、なぜアヤが?」
「あぁ、なんでもベルゴに話があるとかでな、俺は用心棒みたいなもんだ。じゃ、あとは頼んだぞ。」
そう言うと、すたすたと酒場を出ていく。
アヤはポカンとした表情でエドスをみていたが、はっと我に返るとエドスを追いかける。
「ちょ、ちょっと、エドスさん!あ、あの」
ドモリ気味のアヤを優しく笑うと、エドスは肩にぽんと手を置き、そっと呟いた。
「いいチャンスだぞ。がんばれ、アヤ。」
一気に真っ赤になるアヤに、エドスはじゃあなと声をかけ、今度こそドアの外へとでていった。

残されたのは、真っ赤なアヤと・・・・・・。

「どうした? いつまでそこに立っている?」
声をかけられやっと夢から覚めたようにはっと身体を震わせるアヤ。
(エドスさん、気付いてたんだ・・・恥ずかしいです〜)

いつからだろう。
この長身の戦士の不器用な優しさに気付いたのは。

戦闘中はいつもアヤを庇うように前に出て。
傷付くと、真っ先に回復してくれて。
それでも、優しく声をかけてくれるわけでもなく。

ただ。
「大丈夫か。気をつけろ。」
これだけで・・・。

どうしていいのか分からず、とりあえずラムダに向きなおりぺこりとお辞儀をする。
自分でも何をしているのか分からない。
(なにやってるんだろう〜)
さらに顔が赤くなる。

「フッ・・」
優しげな声が聞こえて、アヤは顔を上げた。
みるとラムダが口許に笑みを浮かべている。
「お前は・・・面白いな。」
誉められているのかからかわれているのか・・・。微妙な言葉にアヤは首を傾げた。
だがこの一言で、あっという間にアヤの緊張がほぐれていく。
ポンポン、とラムダが隣の椅子を叩く。
座れという意味なのだろう。アヤはニコリと笑うと、遠慮なく隣に座る。

不意にラムダが立ち上がり、カウンターの中へと入っていく。
「アルコールはダメだったな。まぁ、飲めたとしても俺はすすめんが。」
トポトポ、と、オレンジジュースがカップに注がれていく。
コトン、とアヤの前に置くと、再びアヤの隣に座るラムダ。
「ありがとうございます・・。」
ジュースを貰えたことも嬉しいが、また隣に座ってくれるラムダがもっと嬉しくて。

思わず横を見る。
ラムダの肩が見える。顔を見るには見上げなければいけない。
(肩幅広い・・・男の人ですね・・・)
当たり前のことを思ってみる。
思わず肩にもたれ掛かりたくなり、はっと前を向く。

「ラムダさんは・・・いつもここにいるんですか?」
いい機会だと思った。沈黙の中でラムダと一緒にいるのは、いやではない。だが、無口なラムダが自分のことを話してくれる機会はない。
そして、二人っきりの機会というのは今しかない。
アヤの決心を知って知らずか、ラムダはアヤをみる。
優しい瞳に見据えられて、アヤは思わず吸い込まれそうになる。
「あぁそうだ。用心棒がわりだ。ここも物騒だからな。」

いつもいる。
ということは・・・。
「私、ここで働かせてくれませんか?」
思わずラムダに言ってしまうアヤ。
さすがのラムダもその言葉に目を丸くする。

ラムダの言葉はアヤの予想したとおりだった。
「言っただろう。ここは物騒だと。働くなら商店街の方がお前には似合っている。」
きつい言い方だが、それは優しさから来ていることをアヤは知っていた。
だがここはひけない。
「でも・・・ラムダさんもいるし、セシルさんだってここで働いているではありませんか!」
思わず声を上げるアヤ。
再びラムダが驚く。
思わず謝るアヤ。
「いや謝ることはないが・・なぜここにこだわる?」

ドキリ。
心臓が跳ね上がる。
『あなたに会いたいから』
この一言を言えば・・・。

彼はどんな反応をするだろう。

「料理を習いたいのなら、ベルゴをそっちに行かせることも出来る。それでいいだろう?」

相変わらず無表情だったが、どこか焦りの色がでているのにアヤは気付かなかった。

「迷惑でしょうか・・・。」
思わずアヤはラムダをみる。
知らずに涙が浮かんできて、思わずアヤは下を向いた。
だが、それに気付かないラムダではなく・・・。
「アヤ?」
名前を呼ばれただけで体中が沸騰する感覚に襲われる。

「ごめんなさい!」
そう叫ぶと、アヤは飛び上がるように椅子から降り、その場から逃げだした。

が、相手が悪かった。
ぐいと掴まれる。
「いたっ」
思わず声が出る。
「あぁ、スマン。」
緩んだ腕から逃げようとするが、緩んだといっても所詮は男と女。そして相手は屈強の戦士。
アヤに逃げられる術はなかった。

再び沈黙が二人を襲う。
先ほどの心地よい沈黙とはほど遠い、気まずい沈黙。
アヤはいたたまれなくなって、ごめんなさいを何度も連呼した。
その目から涙がこぼれていることも気付かずに。

不意にアヤの身体が宙に浮いたような錯覚に陥る。
ふと目を開けると、ラムダが自分を抱き上げていることに気付く。
驚く間もなく、アヤはカウンターに座らされた。
目線はラムダと同じ位置。
「すまない。俺は怒っているわけではないのだ。それは分かってほしい。」
いつも以上に優しい声に、アヤはこくんと頷いた。

肩に置かれた両手が暖かく、アヤは先ほどまでの気持ちが収まり、逆にふわふわとした気持ちになっていくのに気付く。
「いいか、確かにここには俺もいるし、セシルもいる。バルゴ、そしてスタウトもいる。安全かもしれんが、何が起こるか分からない。そんなところに、お前を・・・アヤを置くわけにはいかない。例えお前が強くてもだ。お前は・・・まだ子供だ。」
本当に子供に言い聞かせるようなラムダの言葉に、アヤは少し悲しくなる。

子供としかみていないのでしょうか?

そんな不安で胸が一杯になる。
「分かったなら、いい。バルゴが来たら送って・・・」
一人納得しているラムダの言葉を遮るように、アヤは叫んだ。
「子供扱いしないでください! 私はもう・・大人です。お酒だって飲もうと思えば飲めるし・・・好きな人だって・・・いるんです・・・」
叫んでいるうちに恥ずかしさがこみ上げ、アヤは俯いた。
「すみません・・・取り乱したりして・・。これだから、子供と言われるのですよね。」
ふふ、と、弱々しくもなんとか微笑む。
また泣いたら・・迷惑をかけてしまうから。
それだけはいやだった。

「俺の言い方が悪かった。」
ラムダはふと寂しそうな口調でそう呟いた。思わずアヤは顔を見上げた。
そこには・・・優しさの中に何か・・別の感情が浮き出ていて。
思わずラムダの顔に見入る。
「お前はもう充分・・・女だったのだな。好きな男が出来たのか・・・。そいつのために料理を習うのか?」
子供をあやすような声でなかった。どこか不安そうな、そんな声。

(こんなラムダさん、知らない)

もしかして、という希望が頭をかすめる。
その希望が、アヤを勇気づけた。
「私は・・・好きな人に会いにここに来たいんです。ダメでしょうか・・・。」
目と目が合った。

通じ合った気がした。
肩に置かれていたラムダの手に力がこもる。

「子供ではないと言ったな?」
ふとラムダが微笑んだ。
ドキリと高鳴る胸につられるかのように、アヤはこくりと頷いた。

そして。

突然のキス。

瞳がこぼれ落ちそうなほど、目を見開いたアヤに、ラムダは思わず笑ってしまう。
「ハハッ・・やはり、まだ早かったようだな」
声を立てて笑うラムダを初めて見たアヤは、それに見とれていたが、笑われているのが自分と知ると、さすがに憮然とした表情を浮かべる。
「そんなに笑わなくてもいいじゃないですか。それに・・・突然すぎます!」
ぷぅ、と頬を膨らませる顔に、思わずドキリとさせられるラムダ。

その表情は、子供ではなく・・・『女』の表情で。

「なら、ことわりを入れてからすればいいんだな?」
「そういう問題じゃありません! ラムダさんの方が子供みたいじゃないですか!」
からかわれていると思っているアヤはまだ拗ねているのか、プイ、と顔を背けたまま。
ラムダはクイ、とアヤの顔を自分に向けると、アヤをマジマジと見つめる。
「ラ、ラムダさん?」
「子供か・・俺が子供ではない証拠、見せてほしいか?」
フッ、と、またラムダが微笑む。

アヤは・・・頷くしかなかった。
そして、目を瞑る。

優しいキスが降りてくる。
アヤは無意識にラムダの首に手を廻す。
ラムダもそれを受けて、優しく抱きしめた。

長い長いキスが離れると、アヤはラムダの胸にもたれ掛かる。そして、思い出したかのように、呟いた。

「言い忘れていました。ラムダさん、好きです。」

唐突の告白に、さすがのラムダも面食らう。そして、笑うと、ラムダも耳元で呟いた。

「俺もだ。お前だけは俺が守ってみせる。この剣にかけてな。」

そして再び抱きしめあって、キスをする。

幸せの空間はしばらくおさまりそうになかった。



「あら、なにしてるの? 鍵でも忘れた?」
「しっ。中に聞こえてしまいます。・・・それにしても、いつになったら入れるのでしょうね。」
「旦那も隅に置けねぇな。まぁ、あの嬢ちゃんじゃ仕方ないか。」
セシルが首を傾げ、ベルゴが笑い、スタウトが呆れるようにため息をついた。

このことをネタにラムダとアヤがからかわれながらも、幸せそうに微笑みあうのはそう遠くない話。

FIN

ラムダ好きです。好きだけど上手く書けません(T_T)
一目見たときから狙ってました(笑)
戦闘中、回復させたり、アヤが攻撃されると、その的に
攻撃させるのは当たり前(笑)
ラムダいいです!!
・・・その愛情が文章力に繋がってほしい今日このごろな
管理人でした(^^;)