月と桜と貴方の瞳


晴れた日の夜は、月がよく映える。
暖かくなってきたこの季節、と友雅は館の庭にある桜の下で月見をすることにした。

昼は暖かいとはいえ、夜はやはり少し冷える。
知らず知らずのうちに、と友雅は寄り添っていた。
・・まぁ、友雅の場合は寒くなくとも寄り添うだろうが・・。
飲みやすいようにと友雅が用意したのは、甘い酒と甘い菓子。
はご機嫌だ。
自然と口元に酒が進む。

「やっぱり、桜は夜のほうが綺麗だね〜。月の光に桜・・う〜ん、風流♪」
は、立ちあがると、桜を見上げる。
うっとりと見上げ、唇から感嘆の吐息が漏れる。
友雅は、そんなの表情に見惚れる。
桜よりも月よりもだけを見ている。
「こらこら、。そんなに桜だけ見ていると、私が寂しくて泣いてしまうよ。」
くすくすと笑う
「へぇ、友雅さんも泣くんですか?ちょっと見てみたいな。」
どうやらさすがのも友雅の歯の浮く台詞も慣れてしまったようで、どうかわすのかを楽しんでいるようだ。
やれやれ、と肩をすくめる友雅をみて、はさらに笑いがこみ上げる。

桜の樹に寄りかかると、は真っ直ぐに友雅を見つめる。
「おや、どうしのかな?今度は私に見惚れているのかい?」
「えぇ。友雅さんも・・月に映えるんですね・・・・。」
あっさりと認めるを、友雅はあっけにとられ、そして笑い出す。
「ふふふ・・やっぱりは可愛いよ。でもね・・・」
友雅も立ちあがると、の側まで歩いていく。
「そんなに遠くから見つめないで、近くで見つめて欲しいな・・・。ほら、こんなに私の腕が温もりを求めているんだから・・・」
を自分の方に引き寄せると、そっと抱きしめる。
桜の香りとの香りが友雅の理性が飛びそうになる。
もまた、友雅の温もりに一瞬酔いそうになる。

「もう・・だめですよ。今日はお月見と夜桜を見るんですから。」
なんとか我を取り戻したは、友雅の身体を押しのけ、くるりと振り向くと再び桜を見上げ出す。
友雅はを後ろから抱きしめ、自分も桜を見上げた。
「桜は逃げないよ・・・でも、はすぐに私の腕の中から逃げるからね。こうして捕まえておかないと、私は落ち着いて夜も眠れないんだ。」
「何言ってるんですか!いつも隣で寝ているじゃないですかぁ!離してといっても・・そ、その離してくれないくせに・・・」
自分で言って恥ずかしくなってきたのか、は友雅の腕に顔をうずめた。
「私が睡眠不足で仕事ができなくなったら大変だろう?」
友雅の口から<仕事>という単語がでてきたこと事態、には驚きなのだが、それ以上にやっぱり可笑しくてやっぱり笑ってしまう。
「友雅さんが・・・仕事って、やっぱり似合わないなぁ・・やっぱり・・」
慌てては口を塞いだ。
『やっぱり仕事は鷹通さんが一番似合う』そう続けようとしたからだ。
彼の前で他の男の名前を出した後、は嫌と言うほどお仕置きをされることをしっている。

だが、友雅がそれを見逃すはずはなく、を自分に向き直らせると、にこりと笑った。
・・・途中で言葉を止めるなんて、らしくないな。遠慮なく言っていいんだよ?」
(・・・ばれてる・・)
の笑いがひきつってしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
「えーと、えーと・・あ、そうそう!やっぱり、友雅さんは、女の人を口説くのが似合う!」
ばっちり!というような表情を浮かべ、得意満面の笑み。
さすがの友雅も何も言えなかった。
確かには間違ったことを言っているわけでもなかったのだから。
(今回は負けたかな)
友雅の顔には苦笑いが浮かぶ。

風が吹いた。
雲があっという間に月を隠した。
「あ〜あ、月が隠れちゃった。今日のお月見は終わりですね。」
がっくりと肩を落としたに、友雅が優しく囁いた。
「月よりも桜よりももっと美しいものを見たいとは思わないかい?」
「どんなものを見せてくれるんですか?」
にっこりと笑う友雅の瞳にいたずらめいたものが光っていることには気づいていない。
「さてね。私は女性を口説くのが似合うらしいから・・やっぱり女性が美しいのかな?」
うぅ、と言葉につまる
「友雅さんのいじわる〜!!」
友雅は声に出して笑った。

友雅が声を出して笑うのはの前だけ。

あたりが明るく照らし出され始めた。
再び月が顔を出したのだ。
は自然と月に目がいく。
は浮気者だね。私はこうして美しいものしか瞳に映していないというのに・・・」

は友雅を見た。
友雅はを見ていた。

「・・・・私が映ってます・・・」
の瞳には私がいるよ・・・」

「月も桜も美しいが・・・たまには私も見ていてはくれまいか?」
「ふふ・・・私はずっと友雅さんしか見ていないんですよ。でも・・ずっと見ていると吸い込まれてしまいそうなんです。」
ひょい、とを抱き上げる友雅。
も抵抗することもなく、やんわりと友雅の首に自分の腕を回した。
「では、吸い込まれてもらおうかな・・・私しか見えなくなってしまうように・・・。私はヤキモチ妬きなんだよ、こう見えても。」
「もう!友雅さんこそ・・・私だけを見ていてくださいね?」

二人の瞳にはいつも映っている・・・。

愛しい人の姿だけが。

FIN
3000HITリクエストを下さった葉月様に捧げます。
友雅創作ということだったのですが、どうやら
私は彼が苦手のようです(笑)
だって、すぐ押し倒そうとするんだもん、友雅(爆)
え?NANが悪いんだろうって?
あっはっは。却下!(死んでこい)

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