彼の存在


アクラム達鬼の一族の陰謀を阻止してあれから1ヶ月がたとうとしていた。
私が、竜神の神子としてこの京の世界に来てから・・・もう1ヶ月かぁ・・・。
私は今、そのまま京の世界にいる。
確かに最初は、元の世界に戻るために、戦っていたのが・・・いつのまにか彼のために戦っていたのかもしれない。
彼が私を守ってくれたように、私も彼の住むこの世界を守ろうと思った。
殿、準備はできましたでしょうか?」
襖の向こうから声がかかる。
私の・・・大好きな彼の声。
「あ、はい。できました。見ていただけますか?」
「失礼します。」
がらり、と襖が開き、私は彼の姿をやっと見ることができた。

この世界にいてほしいという彼の望みに私は頷いた。
藤姫の館から彼の館へと移り住んだ。
・・まぁ、一応、恋人同士っていうところかな?
でも、彼の性格から、私を呼び捨てにすることはできず、部屋を一緒にすることもできず、こうして今に至っているわけで・・・。
あ、でも、寝るときは一緒なんだけど、最近、彼は仕事が忙しいらしく、あまり一緒に寝ることがない。寂しいな・・・・頼久さんの温もりが恋しくなってくる。
や、やだ、何を考えてるんだろう、私ってば。
「どうしました?顔が赤いようですが・・・熱でもあるのでは?」
彼の手が私のおでこにあたる。おまけに彼の顔までもがアップで私の瞳に映る。
ま、ますます赤くなっちゃうってばぁ〜!!
「熱はないようですが・・・大丈夫ですか?」
「は、はい!大丈夫です!そ、それより、頼久さん!ど、どうですか?似合いますか?」
慌てて立つ私を、びっくりした表情を浮かべる頼久さん。
そう、私の大好きな人は、頼久さん。まじめで忠実で・・・。
「はい。とてもお似合いです。やはり殿は御美しい・・・。私は果報者ですね。」
にっこりと笑う頼久さん。
私は顔から湯気がでるんじゃないかと思うくらい赤くなった。

今日は友雅さんが主催するお茶会に呼ばれていた。
久しぶりに八葉が全員集まるというので、私は断るはずもなく、嬉しくて頷いた。
天真君と詩紋君もなぜか京に残った。
天真君は妹さんだけを元の世界に送り返し、こっちの世界も面白いといって、残った。
詩紋君はこちらの世界の料理を覚えたいといって、残った。
私はやっぱり嬉しかったんだけど、頼久さんは難しい顔をしたっけ。
実はお茶会の話に関してもそうだった。訳を聞いてもごまかされた。
なんでだろう・・・・。

「これはこれは、美しい桜の精と見間違うかのような艶姿・・・。周りの花達が恥ずかしがって散ってしまいそうだね。」
お茶会の場所についた途端、出迎えてくれたのは、歯の浮いたような台詞。
「も、もう!友雅さんは相変らず人をからかうんだから!」
頼久さんの時とはまた別の恥ずかしさで私は顔を熱くする。
「ふふふ・・そうやって頬を染めると、本物の桜のようだよ。浚って帰りたくなる・・・」
「うおっほん!」
大きな咳払いで私は思わず振り向いた。
「あぁ、なんだ、頼久殿いらしたのか。殿しか見えなかったよ。」
にやりと笑うと、友雅さんは私の手を取った。
「さて、桜の姫君。席までご案内しましょう。」
そう言うとすたすたと歩き出す。
「ちょ、ちょっと友雅さん!さ、頼久さんも行きましょう。」
頼久さんを手招きする私。見れば憮然とした表情を浮かべている。どうしたのかな?頼久さん。

お茶会の席にはすでにみんなが集まっていた。
いつもとは違う雰囲気に思わず緊張してしまう私。そ、そういえばお茶会なんて始めてじゃない?
そんな私の表情を見ぬいたのか、声をかけてきたのは鷹通さんだった。
「お久しぶりです、神子殿・・・あ、いや、殿。今日はお茶会と言え、そんなに緊張することはないですよ。いつものようにしていればいいんですから。」
相変らず優しい笑みを浮かべてくれる。
「あ、はい。ありがとうございます。鷹通さんは相変らず優しいですね。」
「ええ、私は貴方にだけはそうかもしれませんね。」
・・・あ、あの?それって?

「こんにちわ、殿。・・・どうなされました?」
永泉さんの物腰やわらかな声と微笑みが私を出迎えた。
「あ、永泉さん、こんにちわ。いえ、なんでもないですよ。ただこういう席でちょっと緊張しちゃって。」
あれ?そういえば頼久さんがいない?どこにいっちゃったんだろう・・。
「あの・・頼久さんの姿が見えないんですけど・・・どこに行っちゃったか知りませんか?」
永泉さんは一度ぎくりとした表情を浮かべたあと、すぐに普通の表情に戻る。
「え、えぇ、確か藤姫呼ばれたとかで行きました。さ、さぁ、どうぞ。楽しんでいる間に頼久殿も来ますから。」
「は、はぁ・・」
とりあえず、私は促されるまま用意された席へと移動した。
でも、なんか楽しくない。頼久さんの姿が見えないだけで、どうしてこうも不安になっちゃうんだろう。

席に座り、他の人達との会話も適当に交わしていたが、頭の中に浮かぶのは頼久さんの姿だけ。
まだかなぁ・・・どうしたのかなぁ・・。
「おい、どうした?そ〜んなしけた面して。」
どかり、と天真君が私の隣に座る。ふんわりとお酒の匂いが鼻につく。
「やだ、天真君、お酒飲んでるの?お茶会なのに・・・」
くすくすと笑う。
「用意してあるから飲んだだけだぜ。結構美味いんだよ。やっぱり水が違うからなのかな。どうだ?も飲むか?」
持っていたカップを私に勧める。
こっちの世界には未成年はお酒を飲んではいけない、という法律はないから、私もたまに頼久さんと付き合い程度で飲むこともある。
「いいよ、私は。お茶のほうが好きだし。」
「おいおい、そんなばばぁみたいなこと言うなって。それとも俺の酒が飲めないのか?」
そ、そんな酔っ払いのおやじみたいなことを・・・。
ど、どうしようかなぁ・・・。
迷って考えていた私は、天真君の手が私の肩に回されていたのにも気がつかなかった。

ぺしっ!
「いてっ!・・・何しやがる!泰明!」
「それは私の言葉だ。神子、大丈夫か?」
ぐい、と私と天真君の間に割り込んできたのは泰明さんだった。彼は相変らず私を神子と呼ぶ。・・まあ、名前で呼ばれてもきっと呼び捨てだから、いいんだけど。
「はぁ・・大丈夫ですけど・・」
何が大丈夫なのかよくわからないけど、とりあえずそのまま答える。
でも、こういう席に泰明さんが来るのって珍しいような気がする・・・。なんか興味なさそうなのに。
思わず私は聞いてみた。
「でも、泰明さんがお茶会って、珍しいですね。」
「神子がくると聞いたからだ。でなければ来ない。」
相変らずのそっけない返事。でも、その瞳がなんとなく真剣で私は笑うのも笑えなくなってしまった。

とたとたとた・・・
ばたばたばた・・・
元気のいい足音がふたつ。この足音だけは変わらない。
「あ、詩紋君にイノリ君。」
振りかえると元気のいいこの2人がかけてくる姿が見えた。
ちゃ〜ん!みてみて、新しいお菓子ができたんだ!ちゃんのために作ったんだよ。よかったら食べてくれる?」
くりくりとした瞳、ふわふわした髪は私の記憶のまま。
「おい、どけって、詩紋!よぉ、。元気そうだな。」
元気でちょっと生意気そうな口調も私の記憶のまま。
「ありがとう、詩紋君。イノリ君も元気そうだね。」
「あのさぁ・・俺まだ見習いなんだけどな、ちょっと作ってみたもんがあるんだけどよ・・・」
さっきから後ろに何かを持っている様子なイノリ君がテレながら私に話しかけてきた。
「何を作ったの?見せて見せて。」
「笑うなよ・・・」
そういって出したのは、綺麗な桜の花をモチーフにしたかんざしだった。
「うわ・・・綺麗・・・・これイノリ君が作ったの?」
「やる。」
ぐい、とかんざしの入った箱ごと押し付けられた。
「え?で、でも、こんな立派なもの・・・」
「お前のために作ったんだ。よかったら・・・」
「あ、ありがと、イノリ君。」
なんか、こっちまで照れてきちゃうよぉ。

「どれ、私が殿の髪に飾って差し上げようかな。」
「おい!俺があげたんだ!俺が飾る!」
、こっちで酒飲もうぜ。」
「神子、一緒に話したい。隣に来い。」
殿、よかったら、いろいろお話しませんか?」
「私でよろしければ、笛を教えましょう、どうですか?」
ちゃん、ボクの作ったお菓子食べてよ。」

いつのまにか囲まれた形になり、四方八方から声がかかってくる。
な、なんなのぉぉぉ??
訳もわからず、私はとりあえずにこにこと対応してみる。
あぁん!頼久さん!早くきてぇぇぇ!!

私の願いが通じたのだろうか・・・・。
「申し訳ありません、殿。遅くなりました。」
囲みの外から耳元に聞きたかった声が聞こえた。
「よ、頼久さん!」
私は思わず駆け出して、彼の姿を認めると、力いっぱい抱きついた。
「あ、殿、どうなされました?」
狼狽した表情を浮かべたものの、私を優しく抱きとめてくれる。
「へへ、なんでもない。遅かったね。ちょっとだけ寂しかったな。」
私と頼久さんは、お互い笑いあった。

「「「「「「「うおっほん!!」」」」」」」
咳払いに気づいて、くるりと後ろを振り返る。
見れば7人がこちらを睨むように見ていた。あ、やだ、私ったら、みんなの目の前で抱きついちゃったんだ!恥ずかしい!!
慌てて頼久さんから離れた。
そういえば、頼久さんがゆっくりできるのは、今日だけなんだっけ・・・。
「友雅さん、すいません、ちょっと疲れちゃったので私これで失礼しますね。」
いきなりの言葉に、友雅さんは一瞬言葉を失ったようになる。
「あ・・あぁ、そうかい。なら私がおくって・・・・・」
「頼久さん、帰りましょう。あ、詩紋君、このお菓子貰ってもいいかな?」
「う、うん、いいよ。」
急に話をふられ、驚いたように頷く詩紋君。
「それじゃぁ、失礼します。また機会があったら、呼んでくださいね。頼久さんと一緒に来ますから。」
「あまり参加できませんでしたが、どうぞごゆっくりお楽しみ下さい。」
頼久さんはなぜか勝ち誇ったような微笑を浮かべて私の手をとった。
な、なんか、今日のみんな、変だ・・・・。
思わず私の頭上には?マークが飛び交った。

呆然としたみんなに見送られ、私と頼久さんは館へと向かい歩いた。
「お疲れのようでしたら、すぐに寝所の用意をさせましょう。」
頼久さんは私の顔をまじまじと見ながらそういった。
あぁ、もう!心配性っていうか、過保護っていうか・・・。
私は頼久さんと二人きりになりたいだけなのに!
「つ、疲れてないです!・・あ、だから、その・・・」
よく考えたら嘘をついてしまったことになる。慌てて私はいいわけを考えたが、なかなか思いつかないもので・・・。
「頼久さんの顔をみたら、疲れがふっとんじゃいました!」
口から出たのはこの言葉。
案の定、頼久さんは笑った。
「そうですか。お役にたったようで嬉しいですよ、殿。では、館に帰りましたら寂しい思いをさせたお詫びをさせていただきます。」
は?
なんのことですか?と聞く前に、頼久さんは私を抱きかかえた。お得意のお姫様抱っこ。
「ちょ、ちょっと頼久さん!」
「逃げられてはかないませんので。それに、早く帰ってあなたをこの腕に閉じ込めたいのです。」
にっこりと笑うと、早足で館へと歩き出す。
恥ずかしいことをまじめな顔でいわないでぇぇぇぇ!!!
私は落ちないように彼にしがみ付くのが精一杯だった。

それでも、なぜか嬉しくて・・・・。
私も早く頼久さんの腕の中で眠りたい・・・・。
そんなことを思っていた。

FIN

おまけ。
が去った後のお茶会では、誰がを疲れさせてしまったのか、と、議論がめぐり、殴り合いになったという噂がちらほらと・・(どっから噂が・・(笑))
1111HITしてくれました空様に捧げます。
逆ハーレムにあまりなってないような気も・・・。
とりあえず、誰が誰かわかれば貴方は偉い!(笑)
頼久が相変らず偽者チックですなぁ・・・。
と、とりあえず、空様、受け取ってください!

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