悪ガキどもに感謝のキスを


あたしの最初で最後のファーストライヴが終わり、一週間が経った・・・。

あれから学園内ではちょっとした騒ぎが起きていた。
カイルがイギリスへと帰った後の学園のトップアイドルになったのは、生徒会長、そしてあたしの幼なじみでもある黒崎冬弥君。
3年生のお姉さま方に人気があるのは、平太君みたいだけど・・・。
音先生にも影ではトップ的な存在の教師になっている。
そう・・これもみんなあの後夜祭のライヴが原因なのだ。
マネージャーとして頑張ったあたしは、女性との目の敵とされたものの、生徒会長も冬弥君もあたしを庇うので、表だって苛められることはなくなった。
・・・たまに下駄箱の中に物騒なラブレターは入ってるけど・・・。

バサバサッ・・
帰ろうとしたあたしの下駄箱の中に、今までに貰ったことのない数の手紙の束が入っている。
「・・はぁ・・最高新記録かな?」
多分原因は今日の朝のこと。
いつものごとく遅刻ギリギリのあたしは、やっぱり珍しく遅刻ギリギリの冬弥君と家の前でばったり。
後は通学路一緒な二人はダッシュで教室まで駆け込んだという、色気も何もない登校をしたのだが、周りはそうとってくれなかったらしい。
・・・いやな予感はしていたのよね・・。
「こんな凝った手紙を作る暇があったら、二人にラブレター書けばいいのに・・・」
ふぅ、と溜息一つすると、あたしは手紙を一つ一つ専用の袋に詰め込んだ。
たまに『生徒会長に渡してください』という、手紙も入っているから迂闊に全部捨てられない。
我ながら自分の人の良さに呆れてしまう。
「いたっ!」
いきなり指先に痛みが走る。
人差し指から赤い糸のようなものがたれていた。
・・・血だ。あたしの・・・血。
よく見ると、手紙から何かが飛び出ている。
カミソリ。
昔の漫画でよく使われている手だ。今時こんな手を使う人がいるんだなぁ、と感心してしまった。
もしかして・・・。
そう思って靴を裏返してみる。
バラバラバラ・・・
画鋲がでてきた。
もし分からなかったら?
そう考えて、あたしはぞぉーっとするものが背中に駆けめぐった。
昔の漫画に感謝しなきゃ。

「おい、何してるんだ?」
下駄箱の前で手紙の山に溜息をついているあたしを不審者でも見付けたかのような声をかけてきたのは、一人ではなく二人。
らるくとしぇるだった。
「別に何でもないよ。」
前よりはだいぶ楽とはいえ、散々苛められた思い出が頭をよぎると、どうしてもぎこちなくなってしまう。
「怪我してるじゃねぇか!おい、兄貴、救急車だ!」
「アホか!保健室の間違いだろ!とりあえず、手貸せ!」
あたしがほけっ、としている内にらるくがポケットの中からぐしゃぐしゃのハンカチをだしてあたしの手に巻こうとする。
らるくがハンカチ持っているという事実の方があたしはびっくりした。
「そんな汚いハンカチ使ったら、の手が腐るだろうが!おい、、お前ハンカチ持ってんだろ?出せ。」
相変わらずの命令口調におもわずポケットの中からハンカチを取り出す。
それを奪うようにとると、しぇるはあたしの指に巻いていく。
治療の知識があるわけでもないらしく、あたしの人差し指は親指以上に膨れ上がって、おもわずあたしはおかしくなって笑ってしまった。
「何笑ってんだよ!」
「お前が下手だからだろ!とりあえず保健室に行くぞ!」
有無をいわさず、あたしの両手を掴むと、半ば引きずられるように保健室へと連れて行かれたのだった。

数分後・・・・。
「ありがとうございました〜。」
人差し指に絆創膏をまいて、あたしはぺこりと礼をして保健室を後にした。
保健室を出ると、まるで檻の中のクマのように、うろうろとしている二人の姿が目に映る。
「おう、大丈夫だったか?」
「おい、これだけかよ?包帯とか巻かなくて良いのか?手抜きじゃねぇのか?」
「う、うん、大丈夫。ありがとう。」
おもわず嬉しくなってあたしは二人に礼をいう。
だって、今まで散々苛められていた二人だったんだよ?なんか調子狂うって言うか・・。でもかえって嬉しくて。
「・・・ほれ。最近の女は怖いな・・」
しぇるがあたしに向かって荷物を投げてくる。
受け取ったあたしは、下駄箱に荷物をおいたままだということを思い出した。
「持ってきてくれたんだ・・・」
ぷい、と恥ずかしそうにそっぽを向くしえる。
「とにかく、お前が何でこんな怪我を負わなきゃならねぇんだ?少しは文句くらい言えよ。」
どうやら、あたしのこの手の怪我の原因がわかったらしい。
そりゃそうか。持ってきた荷物の中には、手紙の山もあった。
「でも、彼女たちの気持ちも分かるというか・・・ほら、好きな人に他の人が仲良くしてたら・・やっぱりいやでしょ?」
果たして彼らに分かるのかどうかは知らないけど、あたしはおもわず力説していた。
「「まぁ、たしかに。」」
二人の声がハモる。
一瞬の静寂。
「ぷっ・・あははは〜。本当に中がいいんだね〜。」
あたしは思わず吹き出してしまった。殴られるかとも思っていたけど、何故か笑いが止まらない。
でも彼らは目を合わせると、恥ずかしそうに、ぷいっと背中を向ける。
それがまたあたしにはおかしくて、目から涙が出るほど笑ってしまった。

「あら、鈴木さん。随分と男に取り入られるのが上手ねぇ。」
廊下にずらりと並んであたしに声をかけてきたのは・・えぇと、たしか、冬弥君の取り巻きの一人だったような気がする。
「ホント、ホント。教えてもらいたいくらいだわ。」
それはあたしが教えてもらいたい。何でそこまでパワーがあるんだろう。
ボケ〜っと考えている間にも、罵倒は止まない。
今日の晩御飯な何かなぁ〜。あぁ、欲しい本があったっけ・・。
「ちょっと聞いてるの!」
ドンッ、と肩を押され、何が起こったのか分からなかったあたしはそのまま後に倒れそうになる。
「アブねぇな。頭でも打ったらどうするんだ?」
それを支えてくれたのは、他でもない、しぇるだった。
「ありがと・・。」
おもわず礼をいう。
「やいやいやいやい!は俺と付き合ってるんだ!だから文句ねぇだろう!家が隣なのは親にでも文句言えばいいじゃねぇか!俺も冬弥とは幼なじみでな。お前らのこと言ってもいいんだぜ?俺の彼女を困らせてる、ってな。」
か、彼女??
あたしが、しぇるの??
頭がパニック。
晩御飯が今日食べた昼ご飯と同じだったらどうしよう、なんて悩みも吹き飛んでしまった。
「ちょっとまてよ!は俺の彼女だろ!おい、お前ら、間違うなよ!俺の彼女だ!俺も冬弥とは幼なじみなんだからな!」
今度はらるくのぶっとび発言。
何がどうなってるの〜???
あたしは訳が分からず、とにかく今日買って帰るケーキのことを考え始めた。
・・・現実逃避って、こういうときに言うのね・・・。

らるくとしぇるが彼女たちを無視してわいわいと言い争っている。
彼女たちはどうやら彼らの『冬弥と幼なじみ』というキーワードに反応したのだろう。
こそこそと話し合うと、ふい、と顔を背けて帰っていった。
「ね、ねぇ、もう彼女たち帰っちゃったよ?」
彼女たちの存在すら忘れているのか、あたしが声をかけると、一瞬何のことだ?というような顔をする。
「と、とにかく、ありがとう。なんか知らないけど、助かったよ。」
本当になんか知らない内に助かったみたい。
らるくとしぇるに助けて貰うなんて、本当に夢みたいだね。
・・もしかして、夢なのかなぁ〜。
まぁ、いいや。さっさと帰っちゃおう。
今日はミルクレープにしよっと♪
「じゃぁ、あたし帰るね。今日は本当にありがとう」
ぺこり、と二人に礼をして、鞄を持って帰ろうとする。
「待てよ!」
歩き出したあたしに、後から声がかかる。
くるりと振り向いたあたしに、らるくとしぇるがほぼ同時に叫んだ。
「「さっきのこと、俺、本気だからな!」」
そして、同時に顔を見合わせ、そしてあたしとは逆の方向へと走り去っていった。
・・・??さっき?
あたしはその場から一歩も動けなかった。

家に帰るまでずっと考えていたせいか、ミルクレープを買うのを忘れていた。
ご飯を食べたあたしは、パジャマに着替え、ベットに横たわる。
・・・・さっきって・・やっぱりあの彼女発言??
本気って、どういう意味なのかなぁ・・・。
いつも苛められていたあの二人・・・。
・・・そういえば・・・よく言うよね・・・。
「好きな女の子ほど苛めたくなる男の子の心理」って・・。
ってことは、まさか、あの二人があたしのことを?
考えただけであたしは頭が沸騰するかと思うほど熱くなる。
で、で、でも、ライブが終わった後、誘いに来てくれたのも、今日助けてくれたのも、そういう意味では頷ける。
本気っていってた。
ど、どうしよう!あたし、どうすればいいのかな??

あたしは外が明るくなるまでゴロゴロとベットの上を転がっていた。


「あぁ〜ん!遅刻しちゃう〜〜!!」
案の定、遅刻ギリギリの時間に起きたあたしは、猛ダッシュで通学路を駆け抜けていく。
すると、後から誰かが走ってくる音が聞こえた。
ま、まさか、冬弥君??
恐る恐る振り向くと、そこにいたのは、らるくとしぇる。
「今日から俺達がお前をボディガードしてやる。」
「これなら誰にも文句はいわれねぇだろ。」
ぽんぽん、と二人に背中を叩かれ、そして手をひっぱられる。
「急がねぇと遅刻するぞ!昔からとろいからな、は。」
「ま、待ってよ〜」
あたしは二人の背中を追うように走った。
ちょっぴり気分がいい。
えへへ・・・こう言うのも悪くないなぁ〜。
あたしは二人の背中を眺めながら、そう考えていた。

あたしは二人の背中に感謝のキスを贈った。
どっちが好きだなんてのは分からないから、当分このままになっちゃうけど・・
でも・・選べないのが事実。
その時はその時だよね、うん!

ばいばい、過去の記憶のいじめっこ兄弟。
そして、ありがと、大好きな・・・・・

FIN
創作書くの久しぶりだなぁ〜という作品(何じゃそりゃ)
というよりも、ラヴラブでもなきゃ、シリアスでもない。
う〜ん、やってしまったか?管理人得意技「中途半端」(爆)
と、とにかく、2度目EDがこの二人だったので、惚れました(笑)
いいよね〜。ED欲しかったです。

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