青荷温泉紀行(一)

新青森駅の待合室、
地元の小母ちゃん達が青森弁で話している。
まったく聞き取れない、まるで外国にいる様だ。



去年から数えて4回目、
雪景色が見たくて、雪の中の温泉に浸りたくてやって来る。
そして地酒。
その都度此処で腰を下ろして地酒を味合うのが習慣になった。



いろんな青森の銘酒が並ぶ。
どれでも三つ選んで500円也。
一つが30cc位だろうか。



新青森駅、だいぶ税金が注ぎ込まれている。
立派なものだ。



青森駅から青荷温泉の近くまでバスの便がある。
客は、私たち三人と外人のアベックだけだ。
運転手、もう一人中年の男性、もう一人若い女性、この人たちが関係者のようだ。
乗車すると直ぐ、若い女性が青森弁で何か一言言ってパンフレットを呉れた。
これからの旅の展望を期待したパンフレット、なのに極めて内容が乏しい。
見掛けは立派だ。

弘前、大鰐方面の標識をみて黒石も通過する。
どこの駅も路線バスのように止まって直ぐ発車する。
乗り降りするお客は一人も居ない。
首を傾げるバス路線だ。
料金も青荷温泉のシャトルバスが迎えに来る終着駅まで500円、これもまた不思議だ。

次第に雪が深くなる。



バスの終点に青荷温泉の待合室が有る。
シーズンオフで誰も居ない薄暗い通路にテンや山鳥の剥製が置いてあって気色悪い。

同じバスに乗り合わせた大男の白人、中々男前だ、
昨夜観たギャング映画の主人公に似ている、日本語が達者だ。
しかし、「サムーイ! サムーイ!」とか喋りだすと、
ギャングに立ち向かうのあの精悍なイメージが消えた。

暫くすると迎えのシャトルバスが来た。
其処からが大変なのだ。
国道をそれると両側の雪が窓の高さほどになる。
雪に埋まりかけている電柱に青森弁で何か書いてある。
中年の運ちゃんが一つ一つそれを読んでその青森弁を翻訳してくれる。
これ以上ない安全運転で安心だ。



青荷温泉に連なる川沿いは厳しい崖が続いていて道路が作れないのだそうだ。
だから青荷に入るのにはひとつの山、峠を越えるしかないのだ。
右へ左へと大きくカーブしながら雪また雪の急坂を上る。

昔スキーに出掛けて雪道で往生したことがあるが、
スリップなどの気配もない、最近の車は凄い。
いよいよ青荷温泉が近い。



登り切ったところで車を止めた運ちゃんが
「あの遥か下方にぼんやり見えるのが青荷温泉」
と教えてくれた。
眼下に、まさしく峡間の一軒宿だ。



今度は急坂を下る、まさしく雪中だ。
いみじくも、ウンちゃんが言った。
「私は一日に5、6回この路を通るけどその度に怖いのです」

雪に埋もれた青荷温泉が現れた。







青と赤の布地に「ゆ」の文字が出迎える。



続く