知床物語1

Mさん 今晩は

昨日の釧路からの船はえらいもんであンした。
でも犬房碕あたりから晴れ上がって、
海の上から故郷をジックリとまばたきもせずに眺めどうしました。
知床はいい!!
これから年に一回は行こうと思います。
一週間ほど居ましたが、鹿、キツネとは毎日出っくわします。



この辺を散策する人は熊よけの鈴を鳴らしながら歩きます。
あちこちが熊出没の為通行禁止です。
私はたまたま車で出会いましたが可愛いもんであンす。
数字に自信無いけども、
日本で咲く花は500種類とか、
そのうち250種類はここ知床で見られるとか。

北海道に来て雌阿寒岳と羅臼岳の二つの山をやっつけました。
どちらも深田久弥の日本百名山に選ばれた山です。
どちらもどちらですが、特に知床連山の羅臼岳、生涯の自慢です。
左オホーツク、右太平洋、クナシリが目の前です。
知床半島の先の方三分の一位は人間の行く道ないんです。
獣道しか、あとは鬼の道だけかも。全くの原生林です。
山から滝が直接落ちるんです。
それも幾つも幾つも有るんです。
断崖の岩の割れ目からからいきなり滝が吹き出してるのもあるんです。
で、船で知床岬までの探検であンす。
いろんな水鳥がいます。
断崖絶壁に黒鵜の巣、これはいずれ長良川です。
鷲です。
船頭の話だと、この辺りに二番ひの鷲がいますが、
もう老いて白髪だよって言ってました。
そう言われれば頭から首にかけて白い物が交じってました。
でも眼は浩々と輝いてました。
船は小型なので小回りがききます。大きな熊がいました。
船が近づくと、仔熊が二匹周りでウロチョロしています。

今度はイルカです。
イルカの大群の真っ只中に船が乗り入れたようです。
数百匹も居るんでしょうか。飛んだり跳ねたり潜ったりです。
野生のイルカが手に触れんばかりです。
年に2、3回このイルカの大群がここを通るのだとか。
やがて知床岬です。
岬が見えると同時にクナシリが視野に入ってきます。
家から毎日見てる伊豆半島みたいなもんです。
近いとは聞いていたがこんなに近いとは.....
ここで船はUターンです。延べ6時間の船探検です。


北海道より戻った12日に,
私のごく親しいチョンガ−の友人が胃の全摘出手術しまして、
北海道が何処かに行ってしまいました。
幸い手術ごの経過は良好で3日たった今日は,
歯をくいしばりながら立ち上がったりしています。


東京有明埠頭に早く着き過ぎた。 午後11時55分発。
少し戻ってWANZA ARIAKE BAY MALL を一巡りする。
若者で溢れている。
若者好みのカフェテリア、パスタハウス、シーフード、に交じって格好な酒屋もあって、少し飲み過ぎたか。
12500トンのフェリ−、客の80%がなんと自衛隊。
さすがに戦車は無いようだが装甲車みたいのやら、大きなトラックに圧倒される。
一瞬、戦争に巻き込まれたような錯覚だ。
兵隊たちは屈託ない。
船内探検、5階建ての下二階が車、あと三階が人間空間。
風呂あり、ゲームセンターあり、コーヒーショップも、ビヤーホ−ルもある。
やはりデッキがいい。
折りからの梅雨の中、太平洋を切り裂いてゆく。
梅雨の憂鬱さは微塵にもない。
広いロビーに飛石のように椅子が並んでいる。
その椅子の一つに掛けて深夜の東京湾を眺める。
窓に我が影と東京湾の灯が重なる。

東京を逃げるにあらず梅雨茫々
我が影に灯り重なり梅雨船出


30数時間の長旅、
読書三昧のつもりで俳句も含め日頃読めない本に幾冊か買い足して持参、
が、いざとなると殆ど読まない。
右もひだりも海、海、海。 たまに雲かとも思えるように陸地が見える。
時々大きな黒い鳥が波間を漂っている。
船の真上は太陽だ。 梅雨とは思えない爽やかさ。
梅雨晴れの船のベンチのうたた寝は最高だ。
目が覚めると「日本百名山」を読む。
雄阿寒岳、雌阿寒岳、斜里岳、羅臼岳の内二つ登ろう。
誰かが叫ぶ、夕日が沈むところだ。
真っ赤だが意外に小さい。

朝7:30釧路へ入港。 霧の釧路だ。
昨夜、普通の女の子のように食べてお喋りしていた自衛隊の女兵士達も制服を着ると、
目つきも変わってくる。
気楽にバイバイとでもやったらドカンとやられそうだ。
さあ、初めての北海道ドライブ、
窓から手を出しても雨を感じないのにフロントグラスはベットリだ。
やはり釧路の霧だ。
街外れのコンビニでいろいろ買い込む。
驚いたことに、それから阿寒まで一軒のお店も無い。
車もスカスカ、信号も無い。
お昼頃迄に阿寒に着けば と思っていたのに一時間一寸だ。
阿寒湖畔はアカン、 変にゴチャゴチャしている。

雄阿寒岳の登り口まで引き返す。
阿寒湖の西外れの入り江、人っ子一人いない。
案内書には熊注意と有る。
少し歩くと阿寒湖の水が爽やかに流れ込む太郎湖、
もう少し行くと原始林の中にこれ以上無い静かさの次郎湖。
引き返すと、何と、大きな遊覧船が入り江に入ってきた。
鈴なりの人だ。さすがに声はない。 ジロジロこちらを見ている。
檻の中から人間を見る気分になる。
ナンテコッタ。

雌阿寒温泉の宿に入ると、まず風呂、知る人ぞ知る温泉だ。
二十畳位の木の温泉、硫黄の匂いがきつい。
たっぷり浸かってから、近くのオントネー(アイヌ語で老いた沼)に出掛ける。
あくまでも澄んだ淡いブルーが神秘的だ。



明日登る雌阿寒岳の噴煙も湖面に映っている。
20分程歩いた所に43度のお湯が高さ30メートル流れ落ちる湯の滝。
今なお生成されている天然のマンガン鉱床のせいで岩が真っ黒だ。
中年の夫婦が入っている露天風呂へ割り込む。

昼寝より北の船旅始まりぬ
白昼の太平洋上昼寝覚
蝦夷菊や女も入る露天風呂


夕方阿寒湖畔のアイヌ古式舞踊を見物。
話の種に位のつもりだったが、鶴の舞、黒髪の舞、中々に感動的だ。
180種位の舞が伝承されているそうだ。
ムックリ(竹製のアイヌの民族楽器)の調べは琴線を抉る。
戻って、もう一度温泉に浸る。




雌阿寒岳

鬱蒼とした針葉樹、広葉樹の交じった林をやっと抜けるとハイマツ帯にでる。
始めトンネルのようだったハイマツ林が、何時の間にか背の高さに、
腰も高さに、膝の高さになりついに岩山、いや、一面のお花畑。
いろいろな花が、けなげに咲いている。
白い花が多い。
昨日のオントネーが緑色の怪しい光を発している。
頂上に近づくと滝の音、と思えたのが噴火の音。
凄まじい轟音と蒸気だ。



頂上付近は日が射しているのに視界は閉ざされている。
本来見える筈の知床連山は厚い雲の中だ。
ゴーっと羽音が耳を掠める。
余りに大きな羽音なので、ワシか何かと思ったが、岩燕だ。
登山の初めから終わりまで鳥の鳴き声だ。
が、山の高さで鳥の声が変わる。
下山して又、温泉。

続く