近江記9
木之本町から大音千手堂へ

琵琶湖の東上端をかすめるようにして,





木之本町へ入る。
木之本町は北国街道と北国脇往還の分岐点であり、
古くから交通の要衝・宿場町として栄えた街である。
北国街道を一寸歩いてみた。





車が二台やっと擦違える道幅だ。







懐かしい匂いが漂ってくる。
この辺りは馬の産地で、木之本は馬市が盛んであったと言う。
山内一豊の奥さんが一豊の為に臍繰りをはたいて名馬を買った、
その店があった。





今日午後の手始めは大音千手観音、
電話を入れると、
「お堂でお待ちしてます」
と行き方を教えて頂く。
賤ヶ岳の麓にあるのは判っているのだが、
ぐるぐる探し回っても仲々行き着かない、
何回か賤ヶ岳のリフト乗り場に出る。
もう一度電話する。
細かい道の曲がり方まで教えて頂いたが、
何のことはない幹道に面している。
しかし、何のことはあった。
これがお堂だ。
歴史に残る観音像を納めたお堂との概念とは遠く外れる。







案内の女性が扉を開けて待っていて下さる。

本尊の十一面戦時観音菩薩像は、弘法大師の作と伝わる。
かつて、賤ヶ岳の麓の湖に住む竜を弘法大師が退治し、
千手観音像を刻み、竜の魂を封じ込めた。
その後、峠を開き、
旅の安全を願って御堂を建立したと伝えられる。
賤ヶ岳の合戦により御堂は焼失したが、
観音さまは里人の手により運び出され難を逃れた。
後世、
夢のお告げにより仁王門跡に御堂を建て安置されたと言う。





唇が妖しく紅い。
「この唇は始めからこんな色だったのですか?」
「私の子供の頃からこの色です。
何でも当初からこんな色だったと伝わっています」
案内のご婦人は自信有りげにお話下さった。

観音に性別は無いと聞いていたがこの観音には女性,
それも、成熟した母性を感じた。
「さあ、貴方の子孫を作ってあげますよ」
不遜ながらそんな感じを受けた。

それにしても恐れ入った。
こんな見事な観音様がこんな所に納まっている。
この仏像ブームの世の中、
これでは小組織の窃盗団でも難なく持ち去れるだろう。
お守りする方々のご苦労が慮れる。

此処も写真OK。



頭上仏までじっくり撮らして戴いた。
渡岸寺の十一面等とは著しく異なる。
怒りを顕わにしている頭上仏が見当たらないないのだ。
皆、僅かにだが慈味を帯びた笑みを零している。

続く

 

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